2012年3月30日金曜日

コマツとブリヂストン


コマツ、野路社長が強気に転じた理由

2012/3/30 6:00

2012年3月期に中国で建設機械の販売急減に見舞われたコマツ。野路国夫社長の発言には慎重さがにじんでいたが、ここにきてやや強気なトーンに転じた。「13年3月期は連結売上高で10%増は堅い。営業利益率は15%をめざす」。実現すれば来期の営業利益はQUICKコンセンサス(3059億円)を大きく上回り、08年3月期に記録した営業最高益(3328億円)の更新が視野に入る。何が起きたのか。


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野路社長の自信を裏付ける理由の1つは鉱山機械事業の上振れだ。来期の販売台数はこれまで今期比で「10%増」としていたが、最近「20%増」に引き上げた。売上高は20~30%増える見通し。これまでの見通しが控えめだったのは、鉱山機械の6割を占めるダンプトラック向けのタイヤ不足が背景にあった。だが、タイヤメーカーの増産で「供給不安が薄れた」(野路社長)という。
世界的な資源開発の恩恵を受け、鉱山機械の受注は絶好調。すでに再来期(14年3月期)の生産予定分の受注も終えつつあるもようで「作れば売れる」状態にある。増産前倒しは願ったりかなったりだ。
このほか建機や鉱山機械向けの交換用部品の売上高も来期は20%程度伸びるという。機械本体の累計販売台数の伸びに伴い、部品需要は右肩上がりで増えているためだ。鉱山機械と部品を合わせた今期の売上高は7060億円と前期比29%増える。両事業の売上高営業利益率は推定で20%前後と高く、収益への影響は大きい。野路社長の見込み通り来期の2割増収が実現すれば、営業利益を280億円ほど押し上げることになる。

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足元では為替の円高修正も追い風だ。コマツの営業利益は1ドルあたり1円の円安で50億円、人民元は1%の円安で12億円増える。直近の為替レートで計算すれば、円安効果だけで来期営業利益は300億円ほど増える。
鉱山機械と部品の拡販に円安効果を合計した増益額はざっと580億円。今期のQUICKコンセンサスの営業利益(2760億円)に上積みすれば来期は3340億円になり、最高益更新が見えてくる。ちなみに野路社長が述べた「連結売上高10%増収、売上高営業利益率15%」で単純計算した場合の来期の営業利益もほぼ同水準に届く。
一方、年明け以降に急ピッチで上昇した株価は3月に入って足踏みが続いている。2月末と比べた株価騰落率は29日時点で4%のマイナスで、日経平均株価(4%のプラス)を下回る。投資家は中国の景気減速をなお警戒しているようだ。実際、3月初旬には全国人民代表大会で12年の経済成長率見通しが引き下げられ、20日は豪英資源大手BHPビリトンの鉄鉱石部門社長が中国の鉄鉱石需要の伸び悩みを指摘。景気減速を示唆する材料が相次いだ。
コマツの中国販売はどうなのか。代表的な建機である油圧ショベルの1~3月の中国販売台数は前年同期比50%減となりそうで、11年10~12月期の61%減よりはマイナス幅が縮小。野路社長は「販売減は底が見えた」と最悪期を脱しつつあるとの手応えを感じている様子だ。

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「底が見えた」という発言の根拠はそれだけではない。中国の2月末の建機予約台数は前年同月比2~3割減と、販売台数より減少幅が小さくなっているのだ。予約台数とは顧客が予約金を代理店に支払い、購入意志を明示している台数。コマツは代金回収に支障が出ないように、予約客の支払い能力を今まで以上に厳しく審査しているという。この慎重な販売姿勢が、これまで中国で貸倒損失ゼロという実績につながってきた。
野路社長は「中国の潜在的な建設工事需要はなお大きい。問題は公共工事の再開のスピードだけだ」と次の焦点を指摘する。中国での売上高は来期後半にはプラスに転じ、通期では5~10%増を見込む。
もっとも、中国の回復が遅れても業績に与える影響は株式市場が想定しているより小さくなりそうだ。建機・鉱山機械売上高に占める中国比率は今期で14%と、前期の21%から下がる。来期の中国売上高が見込みを下回っても、鉱山機械・部品の上振れで吸収できるだろう。
来期に最高益を更新する前提で、予想株価収益率(PER)をはじくと、10倍強と大きく低下する見通し。投資家が中国不安の呪縛から解き放たれれば、コマツ株への見方が変わる可能性は高い。
(松本清一郎)



ブリヂストン、目指すはタイヤのコマツ

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2012/3/28 6:00
ブリヂストンが得意の超大型タイヤ事業を強化している。直径が最大4メートルを超え、鉱山車両などに装着される超大型タイヤは、仏ミシュランとブリヂストンが世界市場をほぼ独占しており、2社にとってはいわばドル箱。その得意分野で独自のサービスを強化して、アタマ1つ飛び抜ける戦略だ。
超大型タイヤは最大直径4メートル以上になる
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超大型タイヤは最大直径4メートル以上になる
気温が大幅なマイナスになるロシアの寒冷地帯や高温多湿な東南アジアなど、異なる条件のもと、世界約40カ所で繰り返しテストを繰り返してきた「Bタグ」。これが、ブリヂストンが超大型タイヤ向けに準備する秘密のセンサーだ。タイヤの内側に貼り付けて内圧や温度を随時測定し、管理部門にデータを送信する。3年間のテストで、誤差を0.1%まで抑え、2012年後半から満を持して市場に導入する。
このセンサーを導入する目的の1つは使用状況の把握だ。鉱山用車両は、積み荷を合わせると、合計で最大600トンにもなる。その巨大な車両がタイヤのパンクで鉱山内に止まってしまえば、顧客にとって、再び動かすためのコストがかさむ。センサーでタイヤの状況を把握し、交換時期が分かれば適切なタイミングでタイヤを交換し、パンクするリスクを最小化できる。

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この仕組みは全地球測位システム(GPS)を建設機械に取り付け、操業の状況を把握しているコマツの戦略と似ている。コマツはGPSから得た情報をもとに、将来の需要予測や部品交換の営業活動、さらには顧客のビジネスの状況把握による資金回収の可能性を予測することにも役立てている。ブリヂストンがこのセンサーをタイヤに利用し、データを収集できればコマツと同様の利用方法も可能で、顧客の囲い込みにもつながる。
さらに、センサーを利用しなくてはいけないブリヂストン独自の理由もある。超大型タイヤの需要はここ数年ずっと逼迫しており、現在は注文から実際の納入まで1年半もかかる。「世界中の顧客が、増産要請に日々東京本社を訪れている」(超大型タイヤなど特殊タイヤを担当する武田邦俊執行役員)状況で、コマツの幹部も「タイヤの不足が原因で鉱山用車両の生産を大幅には増やしにくい」と気をもむ。
慢性的なタイヤ不足を解消するため、北米で大規模な工場の建設を進めてはいるものの、実際の稼働は14年から。それまでの打開策の1つとして期待されているのがこのセンサーだ。
タイヤの状況を正確に把握することで、積み荷の積み方や走る経路などを顧客の鉱山開発会社にアドバイスする。武田執行役員は「センサーの設置で、5~10%は確実に寿命を延ばすことができる。複数の鉱山用車両を利用している鉱山では、5%寿命を延ばせれば、数十万ドルのコスト削減につながるだろう」と顧客のメリットを強調する。
コマツはGPSの導入などサービスの優位性で他社に差を付けた。現在、タイヤ業界では需要の拡大に供給が追いつけず、ミシュランとブリヂストンに大きな差は生じていない。ただ、こうしたサービス強化に向けた種まきが、将来的にはブリヂストンの強みとなって表れる可能性がある。
(中尚子)

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